【合格講座6回目】日本の世界遺産(後編)登録年2012年~2020年

合格講座

合格講座、第6回目のページです。

前回は「日本の世界遺産(中編)」ということで、古都奈良の文化財、石見銀山、小笠原諸島などの登録遺産について解説しました。

 

 

今回は日本で登録されている残りの7件を解説します。また、今回で国内の登録遺産に関する講義は最後となりますので、いくつか補足的事項についても解説します。

 

国内の登録遺産をマスターすれば合格にグッと近づきます。ここが踏んばりどきだと思って、がんばりましょう。

 

【合格講座6回目】日本の世界遺産(後編)登録年2012年~2020年

富士山

登録名 富士山 ー信仰の対象と芸術の源泉ー
所属国 日本(山梨県・静岡県)
登録年 2013年
登録基準 3・6
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 日本人の精神・文化を支える信仰の対象
関連する人物 歌川広重/葛飾北斎
キーワード 成層火山/富士講/遥拝/登拝/御師/万葉集/竹取物語/東海道五十三次/富岳三十六景
言わずと知れた日本を代表する山で、日本一の標高(3776M)を誇ります。そのため古くから日本人の精神面・文化面を支えてきました。
その影響で、『万葉集』『竹取物語』など歌集や書物に取り上げられることも多く、また、歌川広重『東海道五十三次』葛飾北斎『富嶽三十六景』などにも描かれています。
富士山は現在でも噴火の可能性がある活火山(円錐型の成層火山)です。火山であるということから自然との共生のために、富士山が信仰の対象になりました。遥拝(遠くから拝む)、登拝(山に登る)、そして江戸時代には集団での登拝(富士講)も盛んになります。また、富士講のさいは御師と呼ばれる人々が巡礼者の宿の手配、道案内などを行うようになりました。
世界遺産登録後は観光客の増加に環境保全が追い付かず、入山規制や入場税の導入など、観光と環境が両立する方法について、模索が続いています。

自然遺産ではなく、文化遺産として登録されていることに注意!

1 円錐形の成層火山であり現在も活動する活火山である
2 古くから信仰の対象とされ、遥拝・登拝・富士講が流行した
3 巡礼者の宿の世話や案内を生業とする御師が活躍した
4 万葉集竹取物語など、古来から和歌や物語の題材に取り上げられてきた
5 歌川広重「東海道五十三次」葛飾北斎「富岳三十六景」の題材にもなった

富岡製糸場

登録名 富岡製糸場と絹産業遺跡群
所属国 日本(群馬県)
登録年 2014年
登録基準 2・4
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 近代日本の発展を支えた官営工場
関連する人物 ポール・ブリュナ
キーワード 殖産興業/田島家/高山社/荒船風穴/木骨レンガ造/トラス構造
富岡製糸場は殖産興業を掲げた明治新政府が設立した官営の器械製糸場です。日本古来の木造建築を採用していますが、西欧から入ってきたレンガを組み合わせた木骨レンガ造りとなっており、屋根組は三角形を基本としたトラス構造が採用されています。
明治政府はおかかえ技師のポール・ブリュナから最新技術の導入や技術者の育成を図りました。もともと富岡は養蚕が盛んなところであり、そういう意味では発展する素地があったと言えます。
富岡製糸場のほか、養蚕農家であった田島弥平旧宅、養蚕教育の研究機関であった高山社跡、そして蚕の卵を貯蔵する施設であった荒船風穴が構成遺産として登録されています。

労働環境については評価が分かれるところです。確かに処遇については配慮されていましたが、長時間労働であったことに間違いありません。

 

1 殖産興業を掲げた明治政府が絹生産の拠点とした官営工場である
2 フランス人技師ポール・ブリュナを招聘し、技術者の育成をはかった
3 全国から工女があつめられ、労働環境にも配慮されていた
4 4つの登録遺産で構成されている
富岡製糸場
田島弥平旧宅(養蚕農家)
高山社跡(養蚕教育の研究機関)
荒船風穴(蚕の卵を貯蔵した場所)
5 富岡製糸場は木骨レンガ造で建てられ、トラス構造が採用されている

明治日本の産業革命遺産

登録名 明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、船舶、石炭産業
所属国 日本(福岡県、長崎県、佐賀県、熊本県、鹿児島県、山口県、静岡県、岩手県…8県11市)
登録年 2015年
登録基準 2・4
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 日本の産業革命を今に伝える産業遺跡群
関連する人物 吉田松陰/トーマス・グラバー
キーワード シリアル・ノミネーションサイト/官営八幡製鐵所/高島炭鉱/三池炭鉱
明治日本の産業革命遺産は日本で唯一のシリアル・ノミネーションサイトとして認められています。シリアル・ノミネーションサイトは複数の遺産の文化・歴史的背景・自然環境している場合において全体を一つの遺産として登録するものです。

古都京都の文化財白川郷・五箇山の合掌造り集落など他県にまたがって登録されている遺産もありますが、基本的には同じ生活圏を形成していることから複数地域にまたがる連続性は認められていません。

長州藩の吉田松陰「松下村塾」で身分を問わず優秀な人材を育成しました。また明治政府は多くのお抱え外国人を雇って欧米からの技術を学びました。

なかでも幕末にイギリスから来日したトーマス・グラバーは西欧式の石炭採掘技術を持ち込み、高島炭鉱で日本で最初の蒸気機関を用いた採掘に成功しました。

その他、構成遺産には三井財閥の三池炭鉱(福岡)や、官営八幡製鐵所(福岡)、韮山反射炉(静岡)などが登録されています。

 

3級の試験では各県の構成遺産について詳細に覚える必要はありません。興味を持ったものを中心に確認しておきましょう。

 

 

1 8件11市23遺跡で構成されるシリアル・ノミネーションサイトである
2 各県の主な登録遺産は次のとおり
※長崎県:端島炭鉱/三菱長崎造船所/旧グラバー住宅/高島炭鉱
※静岡県:韮山反射炉
※鹿児島県:関吉の疎水溝
※岩手県:橋野鉄鉱山
※福岡県:三池炭鉱/官営八幡製鐵所
※山口県:松下村塾/萩城下町
※佐賀県:三重津海軍所跡
3 吉田松陰は「松下村塾」を開き、近代化を担う人材を育成した
4 英国人トーマス・グラバーによって西洋の石炭採掘技術が導入された
5 官営八幡製鐵所など現在も稼働中の施設が含まれている

ル・コルビジュエの建築作品群

登録名 ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への謙虚な貢献
所属国 日本・ドイツ・フランス・スイス・ベルギー・インド・アルゼンチン
登録年 2016年
登録基準 1・2・6
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 日本初のトランスバウンダリー・サイト
関連する人物 登録名ル・コルビュジエ/松方幸次郎
キーワード トランス・バウンダリーサイト/国立西洋美術館/ピロティ/松方コレクション/無限成長美術館

 

20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエの建築作品は、構成遺産が7か国にまたがるトランス・バウンダリーサイトです。日本からは、東京の上野公園にある国立西洋美術館が登録されています。

国立西洋美術館は明治の実業家、松方幸次郎がヨーロッパ諸国で買い付けた美術品(松方コレクション)を展示する場として建設されましたが、その建築を手がけたのがル・コルビュジエでした。建築に当たっては「無限成長美術館」の概念が用いられ、展示作品が増えた場合でも臨機応変に展示室を増設できるよう工夫されています。

ル・コルビュジエは、新しい技術、新しい素材、そしてピロティ構造などの新しい概念を打ち出し、建築の世界に大きな影響を与えたと言われています。

 

世界遺産には登録されていませんが、ル・コルビュジエの建築作品はアメリカやロシアにもあります。全世界的な活躍ですね。

 

1 ル・コルビュジエは20世紀を代表する建築家であり、近代建築の概念を打ち出した
2 構成遺産が7か国に点在する日本初のトランスバウンダリー・サイトである
3 建物の1階部分を柱で支えて開放感を演出するピロティが特徴である
4 日本からは東京上野(台東区)にある国立西洋美術館が登録されている
5 国立西洋美術館
※実業家、松方幸次郎の美術作品群(松方コレクション)の展示場として建設
無限成長美術館の概念が用いられている
ピロティ構造が採用されている

 

宗像・沖ノ島

登録名 『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群
所属国 日本(福岡県)
登録年 2017年
登録基準 2・3
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 古代祭祀の伝統を伝える考古遺跡
関連する人物 宗像氏
キーワード 後悔の安全を祈る祭祀/海の正倉院/宗像大社/宗像三女神/沖津宮/中津宮/辺津宮/古事記/日本書紀
2017年に登録された 『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群は、「沖ノ島」「宗像大社」「古墳群」の3つの要素で構成される世界遺産です。
沖ノ島は大和政権の時代(4世紀)から、航海の安全を祈る祭祀が行われてきました。島全体がご神体となっているため、現在でも原則上陸はできません(正確には島全域が宗像大社の私有地であるため、宗像大社の許可が必要になります)。
宗像大社は、沖ノ島にある「沖津宮」、九州本土にある「辺津宮」、そしてその中間にある「中津宮」の三社からなり、それぞれに宗像三女神を祀っています。3級の試験では覚える必要はありませんが、沖津宮は田心姫神(タゴリヒメ)、中津宮は湍津姫神(タギツヒメ)、辺津宮は市杵島姫神(イチキシマヒメ)です。
古事記日本書紀には、「沖津宮」「辺津宮」「中津宮」の記載があれ、古くから信仰が行われていたことがわかります。
最後の古墳群ですが、これは宗像氏の古墳群です。宗像氏は地方豪族にすぎませんでしたが、航海技術に長けており、大和朝廷が朝鮮(百済)と貿易をする際に影響力を発揮しました。

もともと海洋豪族であった宗像氏は、時代を経て武士化しのちに戦国大名化します。最終的には豊臣秀吉の九州平定により所領は没収・改易されました。

1 沖ノ島では古来から航海の安全を祈る祭祀が行われてきた
2 沖ノ島から発見されている奉献品はすべて国宝に指定されている
3 上記のため海の正倉院と形容される
4 宗像大社では以下の三社で構成され宗像三女神への信仰がおこなわれてきた
沖津宮(沖ノ島)
中津宮(沖ノ島と九州本土の間)
辺津宮(九州本土)
5 宗像大社は古事記日本書紀にも記録がある

長崎

登録名 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
所属国 日本(長崎県・熊本県)
登録年 2018年
登録基準 3
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 禁教とされたキリスト教の信仰の歴史
関連する人物 フランシスコザビエル/豊臣秀吉/徳川家康/天草四郎
キーワード 大浦天主堂/島原・天草一揆/信徒発見
カトリックの宣教師、フランシスコ・ザビエルが日本にキリスト教を伝えたのが1549年。当時、ヨーロッパではルターやカルヴァンによる宗教改革により、旧勢力(カトリック)と新勢力(プロテスタント)が激しく対立していました。
危機感を覚えたカトリックはヨーロッパの外に布教の地を求めます。日本に伝わったのは室町時代の後半(戦国時代)ですが、当初は織田信長などにより保護されました。大谷吉継、大友宗麟、高山右近などがキリシタン大名として有名です。
次の豊臣秀吉は容認から黙認、のちにバテレン追放令を出します。江戸時代になると徳川家康がキリスト教の布教の禁止を明確に打ち出し、同時に鎖国政策を取りました。
つまり布教や信仰は許されなくなったわけですが、それでも密かに信仰を続けた人がおり、その証拠となっている建造物や集落、城跡などが構成遺産として登録されています。
主な構成遺産には国王にも指定されている浦安天主堂や、島原・天草一揆の舞台となった原城跡などがあります。

島原・天草一揆を主導した天草四郎時貞は数々の奇跡を起こしたと言われており、また豊臣秀吉の子孫とする説があるなど、信憑性は薄いものの歴史好きにはワクワクさせてくれる人物です。

1 キリスト教の布教に関する基本知識
フランシスコザビエルが布教をはじめる
※織田信長は布教を保護
豊臣秀吉は布教を保護のちに制限
徳川家康は布教を禁止(鎖国へ)
2 構成遺産は大浦天主堂(長崎市)のほか集落、城跡から構成されている
3 隠れキリシタンの歴史は以下の4つの段階に区分けされている
「はじまり」  :信仰の決意
「形成」    :信仰を続ける努力
「維持・拡大」 :身を隠すための移住(五島列島)
「変容・終わり」:潜伏の終わり
4 原城跡島原・天草一揆の主戦場で構成遺産の1つである
5 1865年に潜伏キリシタンが宣教師に信仰を告白する信徒発見がおこなわれた
※フランスの宣教師ベルナール・プティジャン

百舌鳥・古市古墳群

登録名 百舌鳥・古市古墳群
所属国 日本(大阪府)
登録年 2019年
登録基準 3・4
分類 文化遺産
キャッチフレーズ 現在も残る日本最大規模の前方後円墳
関連する人物 仁徳天皇/応神天皇
キーワード 大山古墳(仁徳凌古墳)/応神天皇凌/前方後円墳
2019年に登録された日本でもっとも新しい世界遺産です。4世紀後半から6世紀前半における大和政権下の天皇陵である古墳群で構成されています。
百舌鳥古墳群には日本最大規模の前方後円墳である大山古墳(仁徳天皇陵)があり、またもう1つの古市古墳群には応神天皇陵があります。この2つが大きさのツートップ。
新しく登録されたばかりの遺跡は話題性もあるので、試験に狙われやすいと言えます。しっかり要点を確認しておきましょう。

因みに百舌鳥はモズと呼びます。読み方は2音なのに漢字は3文字という難読地名ですが、もともとはモズという鳥が語源のようです。いろいろな声色で鳴くためモズ(百舌)となったものの、これだけでは何を意味しているのかが分かりずらいので、鳥をくっつけて百舌鳥になったとのこと。つまり本当は百舌だけでモズと読める…ややこしいですね。

1 4世紀後半から6世紀前半における大和政権下の天皇陵である
2 百舌鳥古墳群には日本最大規模の前方後円墳である大山古墳が残る
3 大山古墳は仁徳天皇陵ともよばれている
4 古市古墳群には前方後円墳の応神天皇陵をはじめ45基の古墳が残る
5 周辺地域は都市化が進んでいるため遺産の保護と住民生活の両立が課題である

国内の暫定リスト

世界遺産の登録を目指す際は、まず国内において「暫定リスト(候補リスト)」に記載される必要があります。

そのうち、世界遺産委員会へ推薦できるのは各年で1件です。

現在、暫定リストには以下の7件が登録されていますが、奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島 が2020年(コロナ禍の影響で2021年に延期)、その翌年に北海道・北東北の縄文遺跡群(2021年予定)の推薦が決定しています(サムネイルの写真は三内丸山遺跡)

 

国内の遺産登録候補、もしくは時事問題として出題される可能性があるので、確認しておきましょう。

 

1  古都鎌倉の寺院・寺社 (神奈川県)
2  彦根城 (滋賀県)
3  飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群 (奈良県)
北海道・北東北の縄文遺跡群 (北海道・青森県・秋田県・岩手県)
5  金を中心とする佐渡鉱山の遺産群 新潟県 平成22年 文化
6  平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-(拡張) 岩手県
奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島 (鹿児島県、沖縄県)
暫定リストは政府が認めた推薦候補ですが、それ以外にも世界遺産への申請に向けて準備をしている自治体は数多くあります。
一例としては、日本三景の1つである松島や天橋立、四国の八十八箇所霊場と遍路道、城下町金沢、立山・黒部ダムなど。推薦される遺産だけはなく、暫定リストに入ってくる遺産についても注目すると面白いですね。

自治体による申請準備(エントリー)、暫定リストに登録される(日本代表候補)、推薦遺産に決定される(日本代表)、世界遺産委員会(世界と対決)と考えると、登録までの道のりは長いですね、、、、、

まとめ

6回目の講座はいかがだったでしょうか。今回の講義で日本にある世界遺産(全23件)のすべてについて、ひととおりの解説が終わりました。

1回目と2回目で学習した「世界遺産の基礎知識」と3~5回目で学習した「国内の世界遺産」で出題範囲の6割弱はカバーできますので、まずはこの2つの分野の知識を固めるのが最善策です。

 

最後に今回の講義のまとめです。ふりかえりに利用してください。

 

・富士山は古くから信仰の対象とされ、遥拝・登拝・富士講が流行した
・富岡製糸場は木骨レンガ造で建てられ、トラス構造が採用されている
・明治の産業遺産は日本初のシリアル・ノミネーションサイトである
・ル・コルビュジエの建築作品群は、日本初のトランスバウンダリー・サイトである
宗像大社では以下の三社で構成され宗像三女神への信仰がおこなわれてきた
・潜伏キリシタンの最初の信仰告白のことを信徒発見という
・百舌鳥・古市古墳群のうち、最大規模のものは大山古墳(仁徳天皇陵)である
・国内の暫定リストは現在7件であり以下の通りの順番で推薦される予定である
2020年 奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島
2021年 北海道・北東北の縄文遺跡群
次回からは海外の世界遺産について取り上げていきます。

3級での出題は主要な世界遺産100件ですが、出題範囲の配点から逆算すると、出題されるのは3分の1程度です。「世界遺産の基礎知識」や「日本の登録遺産」を確実に抑えておけば、海外の遺産については半分程度の正答率でも十分合格圏内ですので、気楽に考えて大丈夫です。

 

 

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