【合格講座7回目】海外の世界遺産(アジア・中東の登録遺産)

合格講座

第7回目の講座です。前回は日本の世界遺産(後編)ということで明治の産業遺産群や、百舌鳥・古市古墳群、そして暫定リストについて解説しました。

 

 

今回から3回にわたって海外の世界遺産を取り上げます。今回はアジア・中東にある世界遺産について解説します。

なお海外の世界遺産は出題範囲が100件となっていますが、出題率から逆算すると実際の試験で問われるのは3分の1、つまり30件から多くても40件程度です。

また3級の範囲では基礎的な内容について問われることがほとんどで、遺産の位置関係や重要なキーワードさえ押さえておけば問題ありません。

その点を考慮して、要点を絞って解説していきます。

 

海外の遺産については「ひろく」「あさく」の気持ちで。それだと解けない問題もあるかもしれませんが、いわゆる「捨て問」ですので気にしないようにしましょう。

【合格講座7回目】海外の世界遺産(前編)アジア・中東の登録遺産

アジア・中東にある登録遺産について要点を確認していきます。

重要な部分については「赤」で強調していますので意識していきましょう。なお、登録名が「赤」で表示されている遺産は以下の2つのうちのどちらかです。

・一般的な知名度が高い遺跡
・公式テキストでの扱いが大きい遺産

つまり、試験で問われる可能性が高い遺産になります。まずは、問われる可能性の高い遺産と重要キーワードに注目していきましょう。

アジアの登録遺産

中華人民共和国

登録名 曲阜の孔廟、孔林、孔府
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード 孔子/儒学(儒教)
重要ポイント 儒学の祖、孔子の生誕の地・終焉の地の遺構が世界遺産として登録されている。孔廟(霊場)、孔林(孔子と子孫の墓)、孔府(子孫の私邸)で構成。
補足 遺構は文化大革命の際に一部破壊されたが、その後修復された
登録名 始皇帝陵と兵馬俑坑
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード 始皇帝/司馬遷の『史記』
重要ポイント 初めて中国を統一した秦の始皇帝の陵墓と、始皇帝の死後の生活を守るために埋められた陶製の像(兵馬俑)で構成されている。
補足 歴史家である司馬遷の著作『史記』に始皇帝陵の記述がある
登録名 敦煌の莫高窟
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード シルクロードの中継点/九層楼/千仏洞/敦煌文書
重要ポイント シルクロードの中継点にある中国三大石窟のひとつ。莫高窟にある木造楼閣のうち最大なのが九層楼。莫高窟内で発見された多くの文書は敦煌文書と呼ばれる。
補足 文化遺産の登録基準(1~6)をすべて満たす貴重な遺産。ちなみに中国三大石窟(敦煌・龍門・雲岡)はいずれも世界遺産である。
登録名 万里の長城
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード 秦の始皇帝/八達嶺長城
重要ポイント 北方民族の進入を防ぐ目的で建設された防御壁。春秋時代から建造が始まり秦の始皇帝がつなげた。明代に大規模な改修が行われ、より強固に。
補足 北京郊外にある八達嶺長城が観光客に人気。
登録名 北京と瀋陽の故宮
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード 紫禁城/大和殿/中国最大の木造建築
重要ポイント 明代・清代の皇帝の居城&政治の中心。別名、紫禁城。城の外側には、大和殿・中和殿・保和殿が並ぶ。正殿にあたる大和殿は中国最大の木造建築。
補足 現在の紫禁城は、故宮博物院として一般公開されている。
登録名 ラサのポタラ宮歴史地区
所属国と分類 中華人民共和国・文化遺産
キーワード チベット仏教/ポタラ宮/ソンツェン・ガンポ/ダライ・ラマ
重要ポイント チベット仏教の聖地(ラサ)にある宮殿(ポタラ宮)。ソンツェン・ガンポがチベットを統一し、その後にダライ・ラマが建設した。
補足 チベット王国が統一されたには7世紀だが、ポタラ級の建設は17世紀なので、時間的な開きがかなりある。

中国の登録遺産は件数が多く、どれも重要なものばかりです。

 

 

東アジア(中国除く)

登録名 『八萬大蔵経』版木所蔵の海印寺
所属国と分類 大韓民国・文化遺産
キーワード 八萬大蔵経/海印寺/板庫/校倉づくり
重要ポイント 海印寺に所蔵されている『八萬大蔵経』は、仏教経典の全集を版木で彫ったもの。モンゴル軍の侵攻で焼失したが、モンゴル軍の退散と鎮護国家を祈念して復刻されたものが現在に残る。
補足 版木が納められている板庫は東大寺正倉院とおなじ校倉造りが特徴。
登録名 高敞、和順、江華の支石墓跡
所属国と分類 大韓民国・文化遺産
キーワード 支石墓の密集地/ドルメン
重要ポイント 巨石を使った埋葬施設(支石墓)の密集地が高敞、和順、江華。地域によって計上が異なる。この支石墓はドルメンとも呼ばれ、西ヨーロッパや南アジアなどにも分布している。
補足 イギリス・ストーンヘンジの韓国版だと考えれば、わかりやすい。
登録名 高句麗古墳群
所属国と分類 朝鮮民主主義人民共和国・文化遺産
キーワード 高句麗/新羅/百済/高松塚古墳
重要ポイント 朝鮮半島北部から中国東北部を支配し、新羅、百済とともに三国時代を形成した高句麗の古墳群。日本の高松塚古墳とよく似た壁画もあり、当時の高句麗の影響力を示している。
補足 古墳群は現在の北朝鮮の首都・平壌の近郊にある。
登録名 グレート・ブンカン・カルドゥン山と周辺の聖なる景観
所属国と分類 モンゴル・文化遺産
キーワード オボー/チンギス・ハン
重要ポイント モンゴルを統一したチンギス・ハンゆかりの聖山。この地で生まれ、死んだとされている。古くから山岳やオボーと呼ばれる石塚に対する信仰がある。
補足 ブンカン・カルドゥンは「神の山」の意。

 

朝鮮半島とモンゴルについてはあまり出題されないので、最低限のキーワードだけ抑えておきましょう。

 

 

東南アジア

登録名 フィリピンのコルディリーラの棚田群
所属国と分類 フィリピン・文化遺産(文化的景観)
キーワード イフガオ族/ハドハド(無形文化遺産)/後継者不足
重要ポイント 2000年にわたって続く棚田の景観である。現在でも少数民族であるイフガオ族が農業を営んでいる。儀式の際に歌われる「ハドハド」は無形文化遺産としても登録。近年は若者が都会に流出し後継者不足が課題となっている。
補足 棚田に大型工作機械は不向きのため、現在も手作業が中心。
登録名 フエの歴史的建造物群
所属国と分類 ベトナム社会主義共和国・文化遺産
キーワード グエン朝/ヴォーバン式/カイディン帝陵/フランス
重要ポイント 1802年から1945年までベトナムを統治したグエン朝(首都フエ)の歴史的建造物群。中国とベトナムを植民地化したフランスヴォーバン式と呼ばれる建築様式)の影響を受けている。
補足 フランス統治下で築かれたカイディン帝陵はバロック様式。
登録名 マレーシア
所属国と分類 マラカとジョージタウン:マラッカ海峡の歴史都市・文化遺産
キーワード マラッカ王国/鄭和/イギリス
重要ポイント 船舶の中継寄港地であるマラッカ海峡を支配して栄えたのがマラッカ王国(首都はメラカ)。明の時代には永楽帝から南海遠征を命じられた鄭和が寄港地として利用した。以後、ポルトガル領、オランダ領、イギリス領と変遷。
補足 ジョージタウンにはイギリス統治時代の建造物が数多く残っている。
登録名 アンコールの遺跡群
所属国と分類 カンボジア・文化遺産
キーワード アンコール・ワット/アンコール・トム/『ラーマーヤナ』
重要ポイント アンコール・ワットはヒンドゥー教の寺院、アンコール・トムは城砦都市遺跡。クメール人の王朝であるアンコール朝が建造。アンコールワットには、『ラーマーヤナ』(ヒンドゥー教の聖典)にまつわるレリーフがある。
補足 カンボジアの内戦により一時は危機遺産に登録されていた(現在は回復)
登録名 スコータイと周辺の歴史地区
所属国と分類 タイ王国・文化遺産
キーワード 上座部仏教/ワット・マハータート/アチャナ仏/アユタヤ朝
重要ポイント タイ族初の統一王朝がスコータイ朝である。上座部仏教を国教とし、タイ文字を制定した。その後アユタヤ朝に併合される。ワット・マハータートの寺院が遺跡内最古の建造物。
補足 仏陀座像「アチャナ仏」が有名である。
登録名 ボロブドゥールの仏教寺院群
所属国と分類 インドネシア・文化遺産
キーワード シャイレンドラ朝/ストゥーパ/ブッダの一生や教え/
重要ポイント 仏教国であったシャイレンドラ朝が西暦800年前後に建造。自然の丘に盛り土をし、頂上にはストゥーパと呼ばれる仏塔が備わっている。回廊の壁面にはブッダの一生や教えを伝えているレリーフがある。
補足 当時は仏教が盛んだったが、現在のインドネシアはイスラム教国である。

 

東南アジアは、6か国からそれぞれ1つずつと覚えましょう。

 

 

南アジア

登録名 アジャンダーの石窟寺院群
所属国と分類 インド・文化遺産
キーワード インド最古の仏教壁画/連華手菩薩/『大唐西域記』
重要ポイント インド最大の都市ムンバイの北東に位置する石窟寺院群。石窟はその成立時期によって前期と後期に分けられる。前期に当たる壁画にはインド最古の仏教壁画が残る。法隆寺の金堂に影響を与えたと言われる連華手菩薩が有名。
補足 唐の玄奘(三蔵法師)が著書『大唐西域記』に当時の繁栄ぶりを記した。
登録名 ゴアの聖堂と修道院
所属国と分類 インド・文化遺産
キーワード フランシスコ・ザビエル/マヌエル様式/ボム・ジェズ・バシリカ
重要ポイント 16世紀にポルトガル領となり、アジアにおけるキリスト教布教の拠点となった港町。当時は「黄金のゴア」と呼ばれた。ザビエルが来訪後、ルネサンス様式、バロック様式、マヌエル様式の聖堂、修道院が建設された。
補足 ボム・ジェズ・バシリカ教会にはザビエルの遺体が安置されている
登録名 タージ・マハル
所属国と分類 インド・文化遺産
キーワード シャー・ジャハーン/ムムターズ・マハル/アウラング・ゼーブ
重要ポイント ムガル帝国5代皇帝シャー・ジャハーンの妃、ムムターズ・マハルの霊廟で、20年かけて建設した。その後、6代皇帝アウラング・ゼーブに幽閉される。シャー・ジャハーンの棺は、ムムターズの棺の横に安置された。
補足 登録基準1のみで登録されている希少な世界遺産である
登録名 サガルマータ国立公園
所属国と分類 ネパール・自然遺産
キーワード エヴェレスト/シェルパ族
重要ポイント サガルマータはネパール語で「世界の頂上」を意味するが、一般的な呼称はエヴェレスト。インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突・隆起してできたヒマラヤ山脈に位置する。公園内には貴重な哺乳類や鳥類が生息している。
補足 周辺はシェルパ族の生活圏。エヴェレスト登山へのポータとして有名。
登録名 カトマンズの谷
所属国と分類 ネパール・文化遺産
キーワード ダンバール広場/ネパール大地震
重要ポイント 首都カトマンズの近隣に位置する盆地状の谷。歴史的建造物群が密集。ダンバール広場には20棟以上の寺院、僧侶・貴族の館などがある。何度も地震に見舞われており、最近では2015年のネパール大地震で被害を受けた。
補足 人口増や開発が原因で、一時的に危機遺産として登録されていた。

 

最後の「カトマンズの谷」のように、たとえ遺産名が「地形」のみのシンプルなものであっても、そこに「建造物」がある場合は、ほぼほぼ文化遺産としての登録になります。まれに複合遺産で登録される場合もありますが、それは例外として別に整理しましょう。

 

中央アジア

登録名 文化交差路サマルカンド
所属国と分類 ウズベキスタン
キーワード シルクロード/ティムール朝/青の都
重要ポイント 中央アジア最古の都市でシルクロードの中央に位置することから、交通の要衝として発展した。モンゴル帝国のチンギス・ハンに破壊されたが14世紀にティムール朝の首都として再興。
補足 青色のタイルで彩られた建物が多かったことから「青の都」と呼ばれた。
登録名 シルクロード:長安から天山回廊の交易網
所属国と分類 カザフスタン(及びキルギス・中国)
キーワード フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェン/ソグド人/張騫
重要ポイント 3か国にまたがる世界遺産。シルクロードの名はドイツ人地理学者のフェルディナンドが命名。物資の運搬にはオアシス民であるソグド人が活躍した。シルクロードの開拓者は前漢時代に西域に派遣された張騫といわれる。
補足 主に東(中国)からは絹、西からは硝子・宝石・楽器などが運ばれた。

 

シルクロード:長安から天山回廊の交易網は、シリアルノミネーションであり、かつ国境をまたぐトランスバウンダリー・サイトです。

 

 

中東の登録遺産

登録名 イスファハーンのイマーム広場
所属国と分類 イラン・文化遺産
キーワード アッバース1世/イマーム広場/アリー・カプ―宮殿/アラベスク模様
重要ポイント サファヴィー朝の全盛期を演出したアッバース1世がイラン高原に築いた都がイスファハーン。その繁栄ぶりから「世界の半分」と呼ばれるほど繁栄した。中心地にあるイマーム広場アリー・カプ―宮殿が観光名所。
補足 モスクには幾何学的なアラベスク模様があしらわれているのが特徴。
登録名 バムとその文化的景観
所属国と分類 イラン・文化遺産(文化的景観)
キーワード アルゲ・バム/日干しレンガ/カナート
重要ポイント バムはインド南部に位置する城塞都市。街の中心にあるアルゲ・バム(バム城塞)は全長2キロにおよび9世紀につくられた。日干しレンガを主な建材として利用。イランのオアシス都市には地下水路(カナート)がある。
補足 イラン大地震などの影響で一時的に危機遺産に登録されていた。
登録名 ペルセポリス
所属国と分類 イラン・文化遺産
キーワード アケメネス朝/ダレイオス1世/ゾロアスター教/アレクサンドロス大王
重要ポイント ペルセポリスはアケメネス朝全盛期のダレイオス1世が建設した都市。壮大な建築群が立ち並び、建物にはゾロアスター教の最高神のレリーフがある。前330年にマケドニアのアレクサンドロス大王の東征により滅亡した。
補足 長らく廃墟になっていたが、20世紀になって発掘作業が本格化した。
登録名 エルサレムの旧市街とその城壁群
所属国と分類 エルサレム(ヨルダンによる申請遺産)・文化遺産
キーワード 3つの宗教の聖地/嘆きの壁/ディアスポラ/岩のドーム/危機遺産
重要ポイント 3つの宗教の聖地。ユダヤ教は離散(ディアスポラ)を強いられたユダヤ人の祈りから「嘆きの壁」、キリスト教はイエスの墓とされる「聖墳墓協会」、イスラム教は祈念堂である「岩のドーム」が構成遺産。
補足 紛争が続く情勢のため、長い間危機遺産に登録されている
登録名 フェニキア都市ビブロス
所属国と分類 レバノン・文化遺産
キーワード 海上貿易/アルファベットの起源/フェニキア文字
重要ポイント 紀元前3000年ころから海上貿易で栄えていたフェニキア人の港町として発展。ビブロスの遺跡からアルファベットの起源とされるフェニキア文字が発見される。ビブロスは「バイブル(聖書)」の語源にもなった。
補足 フェニキア都市として最も有名なのは、北アフリカにあったカルタゴ。
登録名 イスタンブルの歴史地区
所属国と分類 トルコ・文化遺産
キーワード コンスタンティノープル/アヤ・ソフィア/ブルー・モスク
重要ポイント アジアとヨーロッパの境界に位置する東西文化交流の要衝。ビザンティオン、コンスタンティノープル、イスタンブルと都市名が変遷。オスマン帝国時代にギリシャ正教会の総本山がアヤ・ソフィアとしてモスクに改築される。
補足 構成遺産の1つに17世紀に建造されたブルー・モスクがある。
登録名 ヌビアの遺跡群:アブ・シンベルからフィラエまで
所属国と分類 エジプト・文化遺産
キーワード アブ・シンベル神殿/ラメセス2世/イシス神殿/アスワン・ハイ・ダム
重要ポイント アスワン・ハイ・ダムの建設の際に救済事業が展開された古代エジプトの遺跡群。ラメセス2世によって紀元前1250年ごろに建造されたアブ・シンベル神殿や、プトレマイオス朝時代に建てられたイシス神殿が代表的な遺跡。
補足 救済事業によって各遺跡は高い場所や別の場所に移築された。
登録名 メンフィスのピラミッド地帯
所属国と分類 エジプト・文化遺産
キーワード メンフィス/ギザ/クフ王/スフィンクス
重要ポイント カイロ近郊にあるメンフィス周辺のピラミッド遺跡群。ギザにある三大ピラミッド(クフ王・カフラー王・メンカウラ―王)が有名。最も大きいのがクフ王のピラミッド。スフィンクスも構成遺産。
補足 ピラミッドは王墓とする説が有力。建設により建築や測地の技術が発達。

 

エジプトについては中東で区分けしました。どちらも重要な遺産なので、確実におさえましょう。

 

まとめ

今回は海外の世界遺産のうち、アジアと中東地域で登録されている遺産について解説しました。

1つ1つ覚えるのは大変ですが、遺跡数が多い中国については重点的に確認しておきましょう。また、シルクロード:長安から天山回廊の交易網や、イスタンブルの歴史地区、 エルサレムの旧市街とその城壁群は公式テキストでの扱いが大きく試験に狙われやすいと言えます。

 

次回はヨーロッパの登録遺産について学習していきます。登録遺産が多い分おぼえるのは大変ですが、有名な観光地がそのまま世界遺産として登録されているケースも多いので、なじみやすい部分もあるはずです。

 

 

 

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