【合格講座2回目】世界遺産の基礎知識(前編)

合格講座

前回の講義ではオリエンテーションということで、世界遺産をまなぶ上で最初に確認しておくべき事項について学習しました。

 

 

今回は「世界遺産の基礎知識」の分野から、世界遺産の定義や分類、申請の条件、登録までの流れについて解説していきます。

この講座を確認することで、次のことが達成できます。

 

・世界遺産の定義や分類方法、世界遺産条約について理解できる
・世界遺産に登録されるまでの流れを把握できる
・ユネスコ(UNESCO)の役割について理解できる

 

 

それではさっそく解説していきます。

 

【合格講座2回目】世界遺産の基礎知識(前編)

世界遺産について

まずは動画をみてみよう

試験を運営している事務局(世界遺産検定事務局)が、受験者のための学習アシスト動画を公開しています。動画の内容がそのまま試験に出ることもありますので、ウォーミングアップとして活用しましょう。

 

世界遺産の基礎知識や検定合格のための効率的な勉強法について、詳しく解説されています。時間も30分と長くないので、まずはこの動画を見て世界遺産の概要を確認してみましょう。

 

世界遺産の基礎知識 3級 ~世界遺産ってなんだろう?~

 

こちらの動画については、定期的に見直して復習しましょう。余裕がある場合は他の級のアシスト動画も参考程度に見てみるのも勉強になるかと思います。

 

復習の際は、1.5倍速でみると時短にもなり効率的です

 

世界遺産とは?

はじめに、世界遺産とは何か?という定義について解説します。

世界遺産とは一言でいうと、ユネスコ(UNESCO)に世界遺産として世界遺産リストに登録されている物件(不動産)を指します。

ユネスコって、国連機関の中ではよく聞く言葉ですよね?

日本語だと、国際連合教育科学文化機関といいます。この機関が世界遺産の管理、登録の審査などを行っています。

 

要するに国連にある文部科学省ですね。

 

よくユニセフ(UNICEF)と混同してしまう人がいるので、注意して下さい。ユネスコが世界遺産、ユニセフは国際連合児童基金。同じ国連機関ですが、子どもへの支援を手掛ける別の組織です。

この世界遺産には、顕著な普遍的価値をもつものが登録されるとされています。

この普遍的価値の意味合いですが、過去や現代だけではなく将来にわたっても価値がある、価値を維持していかなければならない重要な遺産ということを言っています。

前回の講義でも解説した通り、世界遺産は約1100件あります(日本は23件)。最初に登録されたのは1978年で、登録は12件でした。

 

世界遺産の分類

世界遺産はざっくり言うと、以下の3つに分類されています。

文化遺産 人類の歴史が生み出した記念物や建造物群、文化的景観など
自然遺産 地球の精製や動植物の進化を示す、地形や景観、生態系など
複合遺産 文化遺産と自然遺産、両方の価値を兼ね備えているもの
分類はこの3種類しかありません。

人の手が入った人工的なものは文化遺産、自然のものは自然遺産、どちらの要素もあるものは複合遺産と考えておきましょう。

なお、これ以外にも「危機遺産」「負の遺産」「文化的景観」「トランスバウンダリーサイト」など、世界遺産が紹介される際にはいろいろな呼び方が登場してきますが、これらはすべて概念的な区分けであり正式な分類ではないことに注意が必要です。

世界遺産条約

世界遺産条約は、1972年にユネスコで採択されました。2019年時点の加盟国は193か国で、ほぼすべての国が加盟しています。

加盟国の規模だけをみれば、世界最大規模の条約です。

この世界遺産条約については、確認してほしい条約の性質が3つあります。

 

「文化」と「自然」を一つの条約の中で保護している
遺産の保護・保全の責任は、遺産の保有国にあることを明記している
世界遺産の価値が失われる危険性があるものについては、危機遺産として公表される
危機遺産については、その保有する国がなんとか遺産の価値を回復していかなければならないわけですが、政治的な状況や経済的事情でそれがままならない国というものも存在します。
そのような場合は、世界遺産基金(ユネスコの信託基金)の援助や、他の国の協力をもとに、遺産の価値回復を図るとされています。
この世界遺産基金は、条約締結国の分担金のほか、政府機関や各種の支援団体、また個人からも寄付することができるのがポイントです。

ちなみに検定試験の検定料の一部は世界遺産基金に寄付されています

世界遺産条約はどうして作られた?

そもそも世界遺産という概念は、いつから確立されたのでしょうか。そして、そのもととなる世界遺産条約が誕生したきっかけは、なんだったのでしょうか。

キーワードはエジプトにあるアスワン・ハイ・ダムの建設です。

当時のエジプトは、ナセル大統領の時代。この大統領は、エジプト革命を成功させて独裁政権を確立した軍人です。

ナセル大統領は、ナイル川の氾濫や、安定的な電力供給を可能とするため、公共事業でアスワン・ハイ・ダムの建設を推進します。

ただ、このダムを完成させると、古代エジプトの重要な遺跡が水没することがわかりました。とはいえ、、当時は経済開発(国民の所得向上)のためには公共事業もやむ負えずという空気。

そこでユネスコは、経済開発と環境保全という難しい概念を両立させるために、大々的な救済キャンペーンを行い、それに賛同した世界各国からの支援を取り付けます。

この出来事から、世界に分布する重要な文化財、自然景観を保護しようという機運が高まり、それが世界遺産条約の制定、さらには世界遺産リストの作成につながっていくことになりました。

ちなみにこのとき、水没の危機を免れたのが、ヌビアの遺跡群です。具体的には、遺跡の場所を移築することによって、水没からの難を逃れました。

 

その後、ヌビアの遺跡群は1979年に世界遺産として登録されました

 

世界遺産への申請と登録

世界遺産への申請の条件

世界遺産として登録を目指す場合、各国の政府から登録申請することになりますが、この申請の条件は大きく分けて5つあります。そしてこの5つの条件は、すべて満たさなければなりません。条件に不備があると申請すらできません。

それではどのような条件があるのでしょうか。

 

1 申請国が世界遺産条約の締結国であること
2 各国の暫定リストに登録されていること
3 遺産を保有する国から申請があること
4 遺産が不動産であること
5 遺産が保有国の法律などで保護されていること

 

条件が5個あるといってもそこまで複雑な内容ではなく、よく見てみると常識というか、当たり前のことを言っているにすぎませんよね。

 

世界遺産条約を締結している国が国内法で遺跡(不動産保護し、その政府が暫定リストを作成しその保有国が申請する。ただ、それだけのことです。

ちなみに、申請国は世界遺産条約の締結国である必要はありますが、ユネスコの加盟国である必要はありません。締結国のほとんどはユネスコの加盟国ですが、アメリカやイギリスなどが過去にユネスコから脱退していた時期があります(その場合でも遺産の登録自体は有効です)

なお暫定リストから申請できるのは、1年に1件とされています。

 

日本の場合ですが、2020年に奄美黄島・徳之島・沖縄県の一部、2021年は北海道・北東北の縄文遺跡群が推薦されることになりました。

 

 

世界遺産への登録

世界遺産への登録までの流れを解説します。

まず、申請から登録までには2つの過程があることを理解してください。1つめは国内で推薦する遺産を決定する過程、そして2つ目がユネスコで審査・決定する過程です。

 

ややこしい部分ではありますが、試験に必ず出題される部分なので、しっかりと理解しましょう。

国内で推薦する遺産を決定する過程

まずは最初の過程です。国内(日本)においては、暫定リストに登録されているものから、担当省庁が推薦候補を選定します。

自然遺産であれば環境省か林野庁、文化遺産であれば文化庁や内閣官房が推薦します。

 

よくひっかけ問題で出題されます。文部科学省や農林水産省もそれっぽく聞こえますが、担当省庁ではないので注意。

 

暫定リストから候補がしぼられたら、最終的には世界遺産条約関係省庁連絡会議という場で推薦遺産を選出します。この時点でほぼ確定ですが、最終決定は内閣の閣議決定とされています。

決定されたものは、ユネスコにある世界遺産センターに推薦書が提出(申請)されます。

ユネスコで審査・決定する過程

つづいて2つ目の過程です。

上で説明したとおり、まずは各国政府が世界遺産への登録を目指すものを指定し、暫定リストを作成します。日本を例にすると、彦根城や鎌倉、佐渡金山、奄美黄島などが暫定リストとして登録されています。

暫定リストの中から申請の5条件を満たしたものを、ユネスコの世界遺産センターに推薦します。推薦書を受理したセンターは、専門の調査機関に物件の調査を依頼します。

この専門の調査機関は委託先が決まっており、自然遺産についてはICUN(アイユーシーエヌ)、文化遺産についてはICOMOS(イコモス)に調査を依頼します。

 

ICNU(国際自然保護連合)が自然遺産で、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)が文化遺産の調査を担当します。

 

調査機関は調査完了後、世界遺産センターに報告書を提出します。報告書を受け取ったセンターは、それを最終的な決定機関である世界遺産委員会に提出します。

そして年1回開催される世界遺産委員会にて、世界遺産へ登録するかどうかの審議・決定を行い、審議の結果は各国政府に通知されます。

 

審議の結果については4種類ありますが、3級の範囲で内容が問われることはありません。

 

ユネスコ(UNESCO)について理解しよう

ユネスコについて確認しておきたい項目は、以下の通りです。

 

・日本語名は国際連合教育科学文化機関である
・設立は1946年
・本部はフランス(パリ)
・国連の中にある専門機関である
ユネスコ憲章をもとに設立された

 

最後のユネスコ憲章ですが、ユネスコ設立の理念(教育・科学・文化をつうじて平和な世界を実現する)が謳われている宣言文のようなものです。

そして試験でよく狙われるのは、ユネスコ憲章の前文の部分。これについてはキーワードを中心にしっかりおぼえておきましょう。

 

「戦争は人の心の中に生まれるものだから、人の心の中にこそ、平和のとりでを築かなければならない」

ユネスコは第二次世界大戦の反省をもとに設立されました。その設立の思いが、ユネスコ憲章の土台となっているのがわかります。

 

まとめ

今回は世界遺産に関する基礎知識として、世界遺産の定義や分類、世界遺産条約について、そして登録の手順について解説しました。

いずれも必ずと言っていいほど、試験で問われる内容になっています。とくに登録手順については何度も読み直して、しっかりと理解するようにしましょう。

 

重要事項についてまとめたので、もう一度確認しよう

 

・世界遺産は国連のユネスコ(UNESCO)が管理している
・世界遺産には、顕著な普遍的価値をもつものが登録される
・世界遺産は、「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の3つに分類される
世界遺産条約の締結国は193か国であり、条約としては最大規模である
ヌビアの遺跡群の救済キャンペーンにより世界遺産条約の制定機運が高まった
・世界遺産へは5つの申請条件があり、すべてを満たさなければならない
・登録申請には「国内での選出」と「ユネスコでの審査」の2段階がある
・ユネスコは1946年フランスのパリを本部として設立された

 

次回は世界遺産の基礎知識(後編)です。引きつづき重要な分野になりますので、確実に学習していきましょう。

 

 

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