【世界遺産検定3級講座】危機遺産と登録抹消の実例を学ぼう

博士、世界遺産って一度登録されたらずっと残るんだと思ってたけど、ニュースで「登録抹消」って言葉を見たことがあるよ。そんなこと本当にあるの?

あるんだよ。世界遺産は“登録して終わり”じゃなくて、“守り続ける責任”があるんだ。もしその責任を果たせなければ、最悪登録抹消になることもあるんだ。
危機遺産リストとは?
危機にさらされている世界遺産一覧表(Danger List)とは、戦争、自然災害、観光開発、環境破壊などによって、遺産の価値が失われるおそれがある場合に掲載されるリストです。
これは“罰”ではなく、“保護のための警告”です。
危機遺産に登録されると、ユネスコや他国からの支援を受けやすくなり、保全活動を強化するきっかけにもなります。

なるほど!つまり「危機遺産リスト」は、“お助けリスト”みたいなものなんだね。

その通り。リスト入りすることで、世界中が注目して支援しやすくなる。だから「守るためのアラーム」なんだ。
危機遺産の主な原因
危機遺産リスト入りの理由はさまざまですが、代表的な原因は次の5つです。
危機遺産の5大要因(漢字で覚えよう)
- 戦争(戦乱):文化財の破壊・略奪(例:シリア古代都市群)
- 災害(自然):地震・洪水・火山などによる被害(例:バム遺跡)
- 開発(乱開):観光・都市化・道路建設などで景観が損なわれる
- 環境(汚染):気候変動や森林伐採による劣化(例:ガラパゴス諸島)
- 管理(怠慢):保全計画や監視が不十分
こうした要因が重なると、世界遺産の価値そのものが危うくなってしまうんだ。
危機遺産リストの登録から解除まで
リスト入りした遺産は、保全活動が改善されると解除されることもあります。
つまり、危機遺産から「復活」するケースもあるんです。
- 登録:委員会が危機の存在を認め、リスト入り。
- 支援:専門家派遣・基金支援・国際協力。
- 改善:保全活動や環境回復が進む。
- 解除:状況が改善されたと認められればリストから除外。

ちゃんと直せばリストから外れることもあるんだね!ちょっと安心した!

そう。大事なのは「危機を克服して守り続ける努力」だよ。たとえばバムとその文化的景観(イラン)は地震で壊滅的被害を受けたけど、再建が進んで2013年に危機リストから外れたんだ。
登録抹消とは?
登録抹消(Delisting)とは、世界遺産としての価値が失われたと判断されたとき、委員会が正式に登録を取り消すことです。
これは極めてまれな措置で、2025年時点で登録抹消となった遺産は3件しかありません。
登録抹消となった世界遺産(3件)
- アラビアオリックス保護区(オマーン):開発により保全面積が90%縮小(2007年)
- ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ):橋の建設で景観価値を喪失(2009年)
- リバプール海商都市(イギリス):再開発で歴史的景観が破壊(2021年)

うわぁ…橋を作っただけで抹消されちゃうこともあるんだ。ちょっと怖いね。

そうなんだ。世界遺産の登録は「守る約束」でもあるからね。
世界遺産委員会は、価値を守れない場合には容赦なく登録を取り消す。
それは「称号よりも保全を重視する」という意思の表れなんだ。
危機遺産と登録抹消の違い
| 項目 | 危機遺産 | 登録抹消 |
|---|---|---|
| 目的 | 保全支援・注意喚起 | 登録の取り消し |
| 判断者 | 世界遺産委員会 | 世界遺産委員会 |
| 戻れるか | 改善すれば解除可能 | 再登録は極めて困難 |
| 代表例 | バムとその文化的景観 | ドレスデン・エルベ渓谷 |
試験でのポイント
3級試験では、以下の点をしっかり押さえましょう。
- 危機遺産リスト=保護のためのリスト(危険を知らせる仕組み)
- 登録抹消=価値喪失による正式な削除
- 抹消例は3件(オマーン・ドイツ・イギリス)を押さえる。
- バム遺跡(イラン)は危機遺産からの解除例。
まとめ
- 危機遺産リストは“警告”であり、“支援のきっかけ”でもある。
- 登録抹消は“最後の手段”。保全の重要性を示す仕組み。
- 世界遺産は登録後も「守る努力」が続くものである。
- 試験では危機遺産と登録抹消の違いを明確に区別しよう。

「危機遺産=警告」「抹消=最終判断」って覚えればいいんだね。世界遺産って“守ること”がいちばん大切なんだなぁ。

そうだね。学ぶことは、守ることの第一歩なんだ。次回は、そんな「保全活動」を支える人や仕組みを見ていこうか。


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