【世界遺産検定3級講座】世界遺産の推薦から登録までの流れ

博士、世界遺産って「登録されるまでにすごく時間がかかる」って聞いたけど、具体的にはどんな流れで決まるの?

いい質問だね。世界遺産登録は、一国の努力だけでなく、ユネスコ・諮問機関・委員会が関わる長いプロセスなんだ。
一言でいえば「推薦 → 審査 → 登録」という三段階の流れだよ。
1. 世界遺産登録の大まかな流れ
世界遺産登録までの流れは、次のような段階で進みます。
- 暫定一覧表への記載
- 推薦書の作成
- 世界遺産センターへの提出
- 諮問機関による調査・現地評価
- 世界遺産委員会での審議
- 登録決定(または延期・不登録)
- 登録後の保全報告
ひとつずつ見ていこうか。
2. 暫定一覧表とは?
暫定一覧表(Tentative List)とは、将来推薦する可能性のある遺産の“候補リスト”のこと。
加盟国が自国の中で選び、ユネスコに提出します。
世界遺産に登録されるには、この暫定一覧表に掲載されていることが絶対条件です。
つまり、「まずは候補入り」しなければ登録の道は開かれません。

へぇ〜!“予備登録”みたいな感じなんだね!日本にもそういうリストがあるの?

あるよ。日本では文化庁が管理していて、富士山や宗像大社も最初は暫定一覧表から始まったんだ。
3. 推薦書の作成と提出
候補が決まると、次に推薦書(Nomination File)を作成します。
これは「なぜこの遺産が世界遺産にふさわしいのか」を説明する詳細な報告書です。
内容は、歴史的背景・価値・保全状況・管理計画など数百ページに及ぶこともあります。
作成には専門家・自治体・住民など、多くの人が関わります。
推薦書は毎年2月1日までにユネスコの世界遺産センターへ提出されます。
4. 諮問機関による評価
提出された推薦書は、専門機関が評価します。
- 文化遺産:ICOMOS(建築・文化的価値の評価)
- 自然遺産:IUCN(生態・自然環境の評価)
彼らは推薦書の内容を精査し、現地調査も行います。
そして約1年かけて評価報告書をまとめ、委員会に提出します。

現地まで来て調べるんだ!じゃあ「世界遺産になったら観光が増えるから」みたいな理由じゃダメなんだね。

その通り。登録の判断基準はあくまで「普遍的価値」だよ。経済効果ではなく、文化的・自然的な意義が大切なんだ。
5. 世界遺産委員会での審議
毎年6〜7月に開かれる世界遺産委員会で、最終的な登録の可否が決まります。
加盟国の中から選ばれた21か国の代表が集まり、諮問機関の報告をもとに議論します。
- 登録(Inscription):正式に世界遺産一覧表に登録。
- 情報照会(Referral):追加情報を求める。翌年再審査。
- 登録延期(Deferral):再推薦を求める。再提出が必要。
- 不登録(Non-Inscription):推薦が却下される。
日本の「富士山」は、最初に提出された時は「延期」になったけれど、改訂を経て翌年に登録されました。

えっ、富士山も一発合格じゃなかったんだ!やっぱり厳しいんだね〜。

そうなんだ。特に文化的景観や宗教的価値は解釈が難しいから、しっかりと再検討されるんだよ。
6. 登録後の義務
登録されたあとは終わりではなく、「保全のスタートライン」です。
加盟国は定期的に遺産の保全状況を報告する義務があります。
- 定期報告(Periodic Report):6年ごとに提出。
- 保全状況報告(SOC):問題がある場合は随時提出。
報告内容に問題があれば、委員会は「危機遺産リスト」への掲載を検討します。
試験でのポイント
3級試験では、この推薦〜登録の流れを時系列で問う問題がよく出ます。
順番を正しく覚えておきましょう。
- 最初は暫定一覧表に掲載されていることが条件。
- 推薦書提出は毎年2月1日が締切。
- 審査はICOMOS/IUCNが担当。
- 最終決定は世界遺産委員会。
- 登録後も定期的な保全報告が必要。
まとめ
- 世界遺産登録は7段階の長いプロセスを経て行われる。
- 暫定一覧表 → 推薦書 → 諮問機関 → 委員会の流れ。
- 登録後も保全報告を続けることが義務。
- 登録はゴールではなく「新しいスタート」。

世界遺産になるのって、こんなに大変なんだ!「登録=ゴール」じゃないってこと、覚えておくね!

その気づきがとても大事だよ、せか丸。世界遺産は“登録された後こそ守る努力が始まる”。
次は、その登録を左右する「選定基準」について詳しく見ていこうか。
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