【世界遺産検定3級講座】世界遺産委員会のしくみと役割を知ろう

博士、ニュースで「世界遺産委員会が〇〇を登録決定!」って聞くけど、この「委員会」って何をしてる人たちなの?

いい質問だね。世界遺産委員会は、世界遺産条約の運営を担う中心的な組織なんだ。つまり、「世界遺産の心臓部」ともいえる存在だよ。
世界遺産委員会とは?
世界遺産委員会(World Heritage Committee)は、1972年に採択された世界遺産条約に基づいて設立された機関です。
加盟国(締約国)の中から選ばれた21か国の代表で構成され、ユネスコ本部のもとで運営されています。
委員国は原則として6年の任期を持ち、毎年開催される会議で世界遺産に関する重要な決定を行います。

21か国だけなんだ!けっこう少ないね。でもどうやって選ばれるの?

加盟国全体の中から、地域のバランスを考えて選ばれるんだ。たとえばヨーロッパばかりに偏らないように、アジア、アフリカ、中南米など世界中の国々から選出されるようになっているよ。
委員会の主な役割
世界遺産委員会の仕事は多岐にわたります。
単に「登録を決める」だけではなく、登録後の保全や危機対応も担当しています。
主な役割(漢字で整理)
- 登録:新たな世界遺産を決定する。
- 監視:登録後の保全状況を報告・審査。
- 警告:危機遺産の指定や改善要請。
- 除名:保全が不十分な場合、登録抹消を決定。
- 協力:保全のための国際支援・資金援助。
これらの業務を通じて、世界中の遺産を「登録して終わり」ではなく「守り続ける仕組み」を維持しているんだ。
世界遺産委員会の会議
委員会は年に1回、通常は6〜7月ごろに開催されます。
会場は毎年異なり、各国の持ち回りで開かれています。
会議では、ICOMOSやIUCNなどの諮問機関の評価報告をもとに、登録の可否を最終的に決定します。
会議の結果、「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」などの判断が下されます。

あのニュースで見る「登録決定!」ってのは、この会議の結果なんだね!

その通り!ちなみに日本の遺産もこの会議で認められているんだよ。たとえば「富士山」が文化遺産として登録されたのも、2013年のカンボジア・プノンペン会議での決定だったんだ。
諮問機関との連携
委員会の判断を支えるのが、3つの諮問機関です。
それぞれ専門分野が異なります。
3つの諮問機関
- ICOMOS:文化遺産の調査・評価
- IUCN:自然遺産の調査・評価
- ICCROM:保存修復の研修・技術支援
諮問機関の評価をもとに、委員会が最終判断を下す流れです。
つまり、世界遺産委員会は「審査の最終ゴール」であり、諮問機関は「専門家の助言役」なんです。
危機遺産リストと抹消
世界遺産委員会の重要な仕事のひとつに、危機遺産リストの作成があります。
戦争や自然災害、開発による破壊など、遺産が危険にさらされていると判断された場合、
委員会はその遺産を「危機にさらされている世界遺産一覧表」に掲載します。
もし状況が改善されなければ、最悪の場合登録抹消となることもあります。
実際に、オマーンのアラビアオリックス保護区は保全面積を縮小したため、2007年に登録が抹消されました。

登録されても油断できないんだね…。守り続けることが一番大事なんだ。

その通りだよ。委員会は“登録する”だけでなく、“保ち続ける”ための見張り役でもあるんだ。
試験でのポイント
3級試験では、次の点をおさえておきましょう。
- 世界遺産委員会=21か国で構成
- 年1回の会議で登録・保全・危機対応を決定
- ICOMOS・IUCN・ICCROMが評価や助言を行う
- 危機遺産リストは委員会が管理
- 登録抹消の例:アラビアオリックス保護区(2007)
まとめ
- 世界遺産委員会は条約の中心機関であり、「登録と保全」を担う。
- 加盟国から選ばれた21か国がメンバー。
- 会議は毎年開催され、諮問機関の評価をもとに判断。
- 危機遺産リストや登録抹消の決定も行う。
- 世界遺産を「守り続ける」責任を持つ機関である。

ニュースで「委員会で登録決定」って聞いたら、「この21か国の人たちが決めたんだ!」って思えばいいんだね!

そうだね。裏ではたくさんの議論と努力があるんだ。次は、委員会の決定を支える「危機遺産制度」や「保全報告」について、もう少し詳しく見ていこうか。
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